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IFRSの特性

IFRSの特徴として、いつも挙げられるのが原則主義とBS重視。先に特徴を抑えておくと、IFRSの理解にも役立つので、先に触れておきましょう。

 

①原則主義

日本や米国の会計基準は細則主義であるのに対して、IFRSは原則主義であると言われます。

細則主義のもとでは、判断材料となる基準が比較的細かく設定されていて、ある基準に当てはまればこういう処理を行うというように規定されていて、判断の余地が少ないと言われています。基準が明確に定められているため会計処理の選択が容易であるだけでなく、客観的状況が同じなら各企業とも同じ会計処理をすることになるので財務諸表数値の比較可能性が高まるというメリットがある一方で、企業固有の情報を踏まえた判断をする余地が少なくかえって会計処理を誤るというデメリットがあります。

IFRSの採用する原則主義のもとでは、基準は大原則を示すだけなので個別の会計処理は経営者の判断により経営実態に即したものが選択されます。一見経営者が自由に会計処理を選択できるようにも見えますが、経営実態の即した会計処理が複数あることはないので理論的には会計処理の自由度が増すということはありません。選択した会計処理の根拠を常に企業が持っていなければいけないという意味では、むしろ対応が大変になると考えるべきでしょう。

IFRSは世界共通の会計基準として機能することを目的としており、様々な国の様々な企業で適用されることを想定して設計されなければなりません。各国各企業の固有の事情をも踏まえて細則を網羅的に規定することは不可能であるため原則主義を採らざるを得ないという事情があるのでしょう。

 

BS重視

業績評価を重視する費用収益アプローチとの対比で、IFRSは企業価値を重視した資産負債アプローチを採っていると言われます。これは、PL重視との対比でBS重視と言われることもあります。

企業価値の有用な情報を提供することを優先するIFRSでは、損益計算書の利益よりも、資産と負債の差額である純資産に重きを置きます。複式簿記の世界では、B/S重視の考え方は、結果的にP/Lの位置づけを変え、IFRSではP/Lは資産負債を公正価値で適切に評価されたB/Sの増減額の一部の発生原因として位置づけられています。

 

細則主義に慣れた人ほど原則主義に注目しがちですが、細則主義のもとでも、会計基準にはいつも理論的な背景があり、それを理解したうえでなければ適切な会計処理を選択することはできません。特にIFRSは世界共通の会計基準として原則主義であることがいわば宿命であり、それゆえに大原則たる会計基準は徹底的に理論的でなければなりません。その理論の根底にあるのが業価価値の評価のための情報提供を主目的としたBS重視の考え方であり、これこそがIFRSを読み解くにあたってのキーであり、極めて重要な視点であると言えます。