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IFRSと日本基準の違い(収益認識)

【IFRSと日本基準の違い】

 

IFRSの収益認識基準はIFRS 15号に規定されています。その変遷は以下の通りです。

 

2014528日にIFRS 15号「顧客との契約から生じる収益」が公表されました。これは、1993年の現行IAS1 8号以来、23年ぶりの大幅な改定でした。

2016412日に「IFRS 15号の明確化」が公表されました(内容の一部改訂)。

・改訂後のIFRS 15号は、201811日以降開始する事業年度より適用されます(早期適用可能)。

 

日本では、収益の認識について、これまで企業会計原則で実現主義による収益の認識ををうたっているのみで、具体的な会計基準は存在しませんでしたが、上記のようなIFRS15号の変更を受けて、ASBJは、2017720日、企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」を公表しました。これは、ほぼIFRS 15号を踏襲していますので、本基準が適用されれば、IFRSと日本基準の差異はほとんど解消されることになります。

 

したがって、収益認識に関して、現時点では、IFRSは収益の認識に関する会計基準があり、日本基準では具体的な会計基準はない、ということになり、消化仕入れの収益認識のタイミングや計上額など個別的には収益認識のタイミングに差異が残されていますが、今後収益認識に関する会計基準が本格適用されれば差異はほとんど解消されることになるでしょう。

 

という状況ですので、現時点では、IFRSにおける収益認識の基本を理解しておきましょう。

 

【IFRS15号 の概略】

 

IFRS15号の基的な考え方

収益を認識する取引の出発点を、契約(受注)ととらえ、その定義から収益認識の原則を導いています。IFRSの演繹的アプローチが如実に表れており、原則論から理論的に基準が積み上げられているところに着目する必要があります。

 

そもそも「顧客との契約」とは?

IFRSにおいて「契約」とは、法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における取決めであり、ある財やサービスを顧客に引き渡すことと引き換えに対価の受け取りを約束するものと定義されます。この財やサービスの引き渡し義務を基準では「履行義務」と呼んでいます。

 

収益認識の原則

IFRSはこの契約、そして履行義務(負債)に着目し、契約の一方当事者の「履行義務」という負債(義務)が解消するタイミングで、収益を認識する、という考えを基本にとしています。したがって、収益の認識時点を考える場合、「履行義務」は何なのか、それがいつ充足されるのか、を検討する必要があります。

 

1)電気量販店が電子レンジを販売し、お客様の家まで届ける。配送料込で代金は2万円。

・・・この場合、「履行義務」は、「電子レンジをお客様の住所に届けること」になります。

× 出荷時点

着荷時点

2)医療機器メーカーのX社が大学病院に医療機器を販売。病院は試運転が終わってから検収・支払を行う。

・・・この場合、「履行義務」は、出荷でも着荷でも設置でもなく、「機器が正常に作動する状態にすること」になります。

× 出荷時点

× 着荷時点

試運転完了時点

 

履行義務を充足した対価はいくらか?

これは、収益の認識(いつ収益をたてるか)の問題ではなく、収益の測定(収益はいくらか)という問題です。IFRSでは、収益の測定は、「履行義務」の対価、すなわち通常は受注金額で計上することになります。IFRSでは、リベートは〝あと値引き“という性質と考えられますので、リベートがある場合は、それを受注金額(対価)の総額から控除して収益を計上します。

 

複合取引はどうなるか?

複合取引とは、複数の取引が組み合わさっているものの、あたかも一つの取引として扱われる取引のことです。いろいろな財やサービスの提供を組み合わせて、総額で取引金額が決まっているようなケースです。

実際の商取引では、このような複合取引が多くあります。IFRSでは、固定資産のコンポーネントアカウンティングなどもそうですが、基本的には組み合わさった取引を分解して、それぞれの特性に応じて理論的な会計処理をしようとします。

 

例えば、ソフトウェア組み込み済みのIT機器や、複合機の販売に1年間の消耗品無料サービスを付帯するような取引があって、取引金額としては、合計金額の取極めしかない場合、これを複合取引と言います。

 

IFRSでは、これを論理的に分解して、それぞれの取引ごとに適切な会計処理を適用しようとしますので、まず取引を細分化して、合計の取引金額をそれぞれの通常単価(独立販売価格)の比率で各取引に配分し、取引ごとに収益認識を行います。

 

例)

医療機器メーカーのX社は、販売後3年間は3か月に1度の定期点検及び消耗部品の交換を無償で行う約束で、医療機器を大学病院に販売した。金額は10,000千円だった。

・・・この場合の履行義務は、「医療機器の納入」「定期点検」「消耗部品の販売」の3つなので、合計金額10,000千円をこの3つの履行義務に独立販売価格の比率で配分します。 

 

【収益認識において考慮すべき事項】

 

IFRS 15号は、収益認識のタイミングである「履行義務」の充足(提供する財やサービスの支配の移転)について、以下の事項を考慮しなければならないとしています(注 IFRSは以下に限定しているわけではありません)。

 

・対価を受け取る権利を有しているか

・所有権がどちらにあるか

・物理的にどちらが管理しているか

・所有することのリスクと便益をどちらが持っているか

・顧客はその物品を受け入れたか

 

旧基準(IAS 18号)が限定列挙であったのに対して、新基準のIFRS 15号は、実際の商取引では、無限の取引形態があり、取引ごとの判断が必要となることから、これらの考慮事項は、あくまで例示列挙とされました。原則主義のIFRSの立場が色濃く出ているところです。

 

IFRS15号を実務に当てはめていく場合には、上記事項も考慮して、総合的に判断することが求められるでしょう。つまり、具体的な例でいえば、IFRSは、出荷基準を否定しているものでもなければ、着荷基準を是としているわけでもありません。「履行義務」を充足するのはどのタイミングであるか、各社が取引ごとに見極めて収益を認識することが求められているのです。