今後ますます高齢化していくことが確実な我が国において、社会福祉法人と同様に今後重要性が高まっていく医療分野においても、経営の透明性の確保、ガバナンスの強化を推し進めるべく、平成27年9月「医療法の一部を改正する法律」が成立し、公布されました。
特に会計の分野では、経営の透明性の確保に向けて、一定規模以上の医療法人に会計基準の適用と財務諸表監査の義務付けを求めた点に注目が集まっています。
【医療法人経営の透明化のための施策の概要】
医療法人経営の透明化のために、会計基準の適用、会計監査の義務化、財務情報の公告、そして関係事業者との取引報告書の提出が義務付けられました。
これらの義務が記された規定は、平成29年4月2日以降に開始する事業年度から適用されます。通常は3月31日決算である医療法人の場合、平成30年4月1日以降に開始する事業年度から適用されることになります。
1.会計基準の適用と財務諸表監査の義務付け
Ø 一定の基準(※)に該当する医療法人に、厚生労働省令で定める会計基準の適用を義務付ける(医療法第51条第2項)
Ø 一定の基準(※)に該当する医療法人に、公認会計士等による外部監査(財務諸表監査)を義務付ける(医療法台51条第5項)
(※)一定の基準とは…
一定の基準については平成28年厚生労働省令第96号で定められています。
① 最終会計年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が50億円以上または最終会計年度に係る損益計算書の事業収益の部に計上した合計額が70億円以上である医療法人
② 最終会計年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が20億円以上または最終会計年度に係る損益計算書の事業収益の部に計上した合計額が10億円以上である社会医療法人
③ 社会医療法人債発行法人である社会医療法人
2.財務情報の広告の義務付け
Ø 一定規模以上の医療法人に、貸借対照表及び損益計算書の公告(官報公告・インターネット上の公開)を義務付ける(医療法第51条の3)
Ø 一定規模の医療法人・社会医療法人の外部監査及び会計基準の適用義務付けに加え、すべての社会医療法人に対して財務情報の公告が義務付けられている(平成28年厚生労働省令第96号)
3.役員と特殊な関係にある事業者との取引状況の作成・報告
Ø 医療法人と関係事業者(いわゆるメディカルサービス法人を含む)との関係の透明化・適正化が必要かつ重要であることから、毎年度、当該事業者との関係を記載した関係事業者取引報告書を都道府県知事に提出することを義務付ける(医療法第51条第1項)
【医療法人のガバナンス関係の主な改正】
改正医療法は、医療法人のガバナンスの強化も進めています。従来の医療法では明確にされていなかった役員(理事・監事)や評議員会の役割等を明記したことが主な改定内容になります。

【医療法人が作成しなければならい書類と決算の届出】
Ø 医療法人は、毎会計年度終了後2ヶ月以内に、①事業報告書、②財産目録、③貸借対照表、④損益計算書、⑤関係事業者との取引の状況に関する報告書、⑥その他厚生労働省令で定める書類(※)(以下、事業報告書等という)を作成しなければならない(医療法第51条第1項)
Ø 医療法人のうち厚生労働省令で定める一定の基準に該当する法人は、厚生労働省令で定めるところによる会計基準により、前項の貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない(医療法第51条第2項)
Ø 医療法人は、厚生労働省令で定めるところにより、毎会計年度終了後3ヶ月以内に、次に掲げる書類を都道府県知事に届け出なければならない(医療法第52条第1項)
① 事業報告書等
② 監事の監査報告書
③ 医療法第51条第2項の医療法人は公認会計士等の監査報告書
(※)厚生労働省令で定める書類
医療法人会計基準及び運用指針では、財産目録・貸借対照表及び損益計算書のほかに、純資産変動計算書と附属明細表(①有形固定資産等明細表②引当金明細表③借入金等明細表④有価証券明細表⑤事業費用明細表)の作成が求められている。
【作成・広告が必要な財務書類等(まとめ)】
