医療法人会計基準(全般的事項)

 

今回からは、いよいよ医療法人の会計基準について解説していきます。

今般医療法が改正され、一定規模以上の医療法人は医療法人会計基準を適用することが義務づけられたわけですが、改正前はすべての医療法人が医療法人会計基準を適用していなかったわけですし、改正後にあっても医療法人会計基準の適用が強制される基準を満たさない小規模な医療法人には依然として医療法人会計基準は適用されません。

医療法人会計基準を新しく適用するにあたっては、医療法人がそれまでどのような会計基準を適用してきたかを知ったうえで、新基準への移行方法・対応を決定していくことが重要です。

ということで、まずは医療法人の会計基準について、その経緯を見ていくことにしましょう。

 

【医療法人会計基準の制定の経緯】

1.   長期にわたる会計基準の未制定

医療法人に対して強制的に適用される(できる)具体的な会計基準は長い間制定されてきませんでした。改正前の医療法の規程には、「医療法人の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従う(改正前医療法第50条)」と規定されているのみであったため、実務では企業会計基準を参考にしつつ、事実上税務ベースの会計処理が行われていた。

2.   四病院団体協議会(四病協)による医療法人会計基準の公表

平成262月、四病院団体協議会(以下、四病協という)によって医療法人会計基準が制定され公表された。この会計基準は、厚生労働省医政局長通知によって、一般に公正妥当と認められる会計慣行のひとつとして認められ、積極的な活用が図られるよう配慮すべきとされたが、依然として正式な医療法人会計基準としては扱われていなかった。

3.   医療法改正に伴う厚生労働省令による医療法人会計基準の制定

改正医療法では、「医療法人の会計は、この法律およびこの法律に基づく更生労働省令の規定によるほか、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする(医療法第50条)」と規定され、これに呼応する形で、厚生労働省令による医療法人会計基準が新たに制定された。さらに、一定の基準に該当する医療法人は、厚生労働省令による医療法人会計基準が強制的に適用されることとなった(医療法第51条第2項)。

 

このように、厚生労働省令による医療法人会計基準が平成28年に公表されるまで、医療法人は長期にわたって絶対的な会計基準を持っていなかったため、それまでは、一部四病協の医療法人会計基準を適用しているケースはあったものの、多くの医療法人は、税務ベースの会計処理を行っていると考えられている。

新医療法人会計基準への移行にあたっては、医療法人がどの会計基準を適用してきたか(以降時点で適用しているか)を知ることが、まず効果的効率的な対応を組み立てていく第1歩になるでしょう。

  

【会計基準の構成】

医療法人会計基準は、以下のものから構成されています。

   医療法人会計基準(厚生労働省令第95号)

   医療法人会計基準適用上の留意事項並びに財産目録、純資産変動計算書及び附属明細表の作成方法に関する運用指針(以下、運用指針という。厚生労働省医政発04205号)

   その他一般に公正妥当と認められる会計の慣行

 

医療法人会計基準では、会計の原則、貸借対照表、損益計算書に関連する会計処理の原則や重要な会計方針や注記として記載すべき事項などについて規定し、運用指針では、簡便法を含めてより具体的な会計処理に加え、財産目録、純資産変動計算書及び附属明細表の具体的な作成方法について規定しています。

 

【重要な会計方針】

医療法人会計基準で規定されている記載すべき重要な会計方針は以下の通りです。

1.   資産の評価基準及び評価方法

2.   固定資産の減価償却の方法

3.   引当金の計上基準

4.   消費税の会計処理方法

5.   その他貸借対照表等作成のための基本となる重要な事項

記載場所は損益計算書の次、重要性の乏しいものは省略が可能です。

 

5番目のその他貸借対照表等作成のための基本となる重要な事項に関し、運用指針では、補助金等の会計処理方法(※)、企業会計で導入されている会計処理等の基準を適用する場合の当該基準、を例示として挙げています。

(※)補助金の会計処理は、固定資産の取得に関する補助金は、直接減額方式または積立金方式による圧縮記帳、運営費補助金のような費用に対応する補助金は事業収益に計上する方法をいいます(運用指針第19条)。 なお、少し注意して見ていただかなければいけませんが、医療法人会計基準では、「貸借対照表及び損益計算書」を、「貸借対照表等」と呼んでいます。

 

重要な会計方針を変更した場合には、その旨、理由、影響額を記載しなければならないのは、企業会計と同じです。

 

 

【表示単位に関する規定】

医療法人会計基準では、表示単位は千円単位と限定しています(基準第6条)。その規模から、百万円単位での表示が必要となることはあまりないのでしょうけど。

 

次回はもう少し各論に入っていきたいと思います。