社会福祉法人制度改革の概要

平成28331日に公布された社会福祉法改正案が平成2941日から施行され(一部が平成2841日に施行済み)、社会福祉法人制度改革が本格的に始まっています。本稿では、社会福祉法人制度改革の概要を見ていきましょう。

 

(1)  経営組織の見直し

① 決議機関としての評議員会の設置に義務づけ

② 理事会・評議員会の権限・責任に関する規定の整備

③ 親族等の特殊関係者の理事等への選任の制限

④ 一定規模以上の法人に対する会計監査の導入

 

詳細は別稿にゆずりますが、最高意思決定機関としての評議員会、業務執行機関としての理事会に関する規定が整備されたほか、監事の選任や一定規模以上の法人には会計監査人の選任義務を課すなど、株式会社のガバナンスをかなり意識した組織設計になっています。加えて、評議員、理事、監事、それに会計監査人についても、資格や要件に制限を設けるなど、法人の私物化に対する世論に配慮した内容も盛り込まれています。

 

(2)  事業運営の透明性の向上

① インターネットによる開示対象書類の整備

② 財務諸表、現況報告書、役員報酬基準の公表

③ 関連当事者取引の開示

 

事業運営に対する透明性の確保も本制度改革の中心的論点です。特に国民へのタイムリーな情報提供を目指し、電磁的記録による情報の提出やインターネットの活用による情報開示を明記している点は当然の流れとはいえ革新的であるといえるかもしれません。いずれにしても社会福祉法人には、電子的な方法による開示体制の構築が求められることになり、法人によってはそれなりに追加の設備投資が求められています。

 

(3)  財務規律の強化

① 社会福祉法人会計基準への準拠

② 役員報酬基準の作成と公表

③ 役員等関係者への特別の利益供与の禁止

④ 社会福祉拡充計画の作成

 

財務規律の強化も大きな課題のひとつです。統一的な会計基準の導入や特に関心の高い役員報酬や関係者との取引の透明化が盛り込まれています。社会福祉拡充計画についても所轄庁への提出と承認が必要とされています。公認会計士の立場としては、社福法第55条の2第5項が、「社会福祉法人は、社会福祉充実計画の作成に当たつては、事業費及び社会福祉充実残額について、公認会計士、税理士その他財務に関する専門的な知識経験を有する者として厚生労働省令で定める者の意見を聴かなければならない」と規定している点にも注目しています。意見を聴かなければならない…、意見を聴くという緩い表現ですが、なけらばならない(義務)としており、なかなか微妙な規定です。いずれにしても、計画も含めて専門家の関与を高め、社会福祉法人の財務体質を強化していくという狙いがあることは間違いありません。

 

(4)  地域社会に対する責務

社福法第24条では、経営の原則等として、以下の2項を挙げています。

①社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければならない。

②社会福祉法人は、社会福祉事業及び第二十六条第一項に規定する公益事業を行うに当たつては、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない。

特に第2項において、日常生活または社会生活上支援を要する者に対する無料または低額での料金で福祉サービスの積極的提供を努力義務とはいえ社会福祉法人の経営の原則して明記した点に注目が集まっています。

 

(5)  行政の関与

① 国は都道府県及び市に対して、都道府県は市に対して、社会福祉法人の指導監督に関する支援を行う

② 経営改善や法令遵守について、柔軟に指導・監査する仕組みに関する規定の整備

③ 都道府県による財務諸表等の収集・分析・活用、国による全国的なデータベースの整備

 

 

行政の関与に関する規定が整理されています。特に社会福祉法人の情報の収集や開示にデータベースを積極的に活用しようという姿勢が見られ、社会福祉法人の側にもこれに対応する体制づくりが急務となっています。