今回は5つのステップの4つめである履行義務への取引価格の配分について解説します。
(概要)
履行義務とは第4回のステップ2で説明したことの繰り返しになりますが、契約の内容として具体的にどのようなモノやサービスを相手に提供するかどうかのことをいいます。具体例として、レストランで食事をする場合は、「お店が客に食事(モノ)を提供すること」が履行義務となることを説明しましたね。取引価格についても第5回で説明した通り「売り上げるべき金額」のことをいいます。
従って、ステップ4ではモノやサービスに対して売り上げるべき金額を配分するというステップになります。
ひとつの契約でひとつのモノを引き渡す場合は特段問題ありませんが、ひとつの契約に複数の履行義務が含まれる場合、それをどのように配分するかが問題となります。
(独立販売価格を直接観察できない場合)
独立販売価格とはモノやサービスを単独で販売する場合の価格をいいます。前述のひとつの契約に複数の履行義務が含まれている場合で、それぞれのモノやサービスの単独の販売価格を把握できる場合はその金額比で按分することは想像がつくと思います。それではその独立販売価格が直接観察できない(=不明)な場合はどうするのでしょうか。
会計基準ではその場合は、どうにかして価格を推定しなさいと規定しています。コストに利益相当額を加算した額や市場での時価から推定するという風に規定します。また例外的な措置として「残余アプローチ」というものもあります。これは価格を推定できるものを全て推定したのちに、全体の価格から当該推定した価格を除いたものを残りモノやサービスの金額とする方法です。これは本当に販売価格が見積もれない状況にある場合(例:実際に販売したことがないモノ)しか用いることが出来ませんのでご注意ください。
(値引きの配分)
ステップ4は値引きについても規定しています。複数の履行義務が含まれている契約について、全体に対して値引きがなされている場合は先ほどと同様に原則として金額比で按分します。但し、こちらも例外的な措置があります。通常単独で販売しているもので値引きが明らかにそこから行われていることが販売実績等から明らかな場合は金額比でなく、該当する履行義務から単独で値引き額を控除することになります。
次回は、最後のステップである「ステップ5:履行義務を充足したときに又は充足するにつれて収益を認識する」を解説します。
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