第3回 受注金額増額時の処理方法~累積的な影響に基づき収益を修正する契約変更(設例4)~

本日も当解説をご覧いただきありがとうございます。難しい収益認識基準を、設例を用いてわかりやすい解説を心がけていきますのでよろしくお願いします。

さて、今回は設例4「累積的な影響に基づき収益を修正する契約変更」です。

これは「一定の期間にわたる充足される履行義務」、すなわち従来の工事進行基準のような売上計上方法をとっている場合に、事後的に受注金額の変更等の契約条件の変更があった場合にどのように会計処理するかを記載した設例です。基本的には変更の都度計算をし直し、従前までの売上消え上金額との差額を計上するといった処理方法になります。

 

それでは、実際の設例で解説していきましょう。なお、今回も適用指針の設例が複雑ですので、単純化したものを用いて解説してきます。

 

1.前提条件

(1)建設請負を本業とするA社はX1年度にB社所有の土地上に本社建物を建築する工事契約をB社と締結した。契約金額は2,000,000であるが、当該契約には着工から24か月以内に完成したら上記契約金額とは別に400,000の割増金を支払う条項がある。

(2)A社は当該工事が天候の影響や監督官庁からの許可時期が不透明であることから24か月以内の完成は難しく、割増金が確実に支払われると判断できなかった(=収益の著しい減額が発生しない可能性が高くない)ことから、割増金を収益計上のための取引価格に含めないこととした。取引開始時点におけるA社の工事見積額は以下の通りである。

 

  工事収益総額(取引価格)     2,000,000(割増金含まず)

  見積工事原価              1,400,000 

  見積工事利益(30%)         600,000

 

(3)本契約はB社土地上で行われるものであり建物はB社が占有・支配していることから、約束した財又はサービスの束を一定の期間にわたり充足される単一の履行義務として処理するものとA社は判断した。

 

(4)X1年度に発生した原価は840,000である。X1年度末において、上記(2)に記載した割増金に関する状況に変化はない。

 

(5)X2年度第1四半期に当該工事契約のうち、内装部分について契約変更を行った。それにより契約金額は300,000増加し、見積工事原価は240,000増加した。なおA社は、当該変更は以前の契約内容と別個のものでないと判断し、当該変更部分を含めて引き続き単一の履行義務として処理すると判断した。なお、当該期間の発生した原価は308,000であった。

 

(6)X2年度第1四半期において、当該建築工事について、すでに内装工事の段階に入っていること、監督官庁からの許可がおりていることから、工事完成時期が適切に見積もれる状況となった。見積もった結果、24か月以内に工事が完成することが判明し、割増金400,000について確実に支払われると判断できるようになった(=収益の著しい減額が発生しない可能性が高い)。このため取引価格に割増金400,000を含めることにした。

 

2.会計処理

(1)X1年度における工事収益の計上(原価部分の計上は省略)

(借方) 契約資産   1,200,000    (貸方)  工事収益   1,200,000

→変更後工事契約金額2,000,000×X1年度末時点の進捗率60%(840,000÷1,400,000

→借方は未だ請求できない資産であるため契約資産として表示(請求可能なものは売掛金)

 

(2)X2年度第1四半期末(契約変更時)

(借方) 契約資産   690,000    (貸方)  工事収益   690,000

2,700,000(*1)×X2年度1Q時点の進捗率70%(*2-前期収益計上額1,200,000

 

*1 当初工事契約金額2,000,000+契約変更金額300,000+割増金400,000

*2 (前期発生原価840,0001Q発生原価308,000)÷変更後見積工事原価1,640,000

 

3.解説

従来の会計基準では建設業等における請負金額の変更や上記割増金のような変動対価について、会計基準上明確な規定が存在していませんでした。このため、実務上は個別の案件について契約内容から判断し、会社独自のルールを設けることで会計処理の判断を行っていたかと思われます。

 

今回の会計基準においては、割増金については基準54項において「収益の著しい減額が発生しない可能性が高い」場合、つまり事後的に修正や取消がおきない可能性が高い場合に取引価格に含めることができると規定しました。また、変更契約についてはその内容が既存の契約と合わせて単一の履行義務となるかどうかで判断することになり明確化されたといえます。

 

 

4.参考

収益認識基準第54

51(変動対価の見積を最頻値か期待値で行うこと)に従って見積られた変動対価の額については、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含める。

 

 

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