第6回 売上を期間収益として計上する場合その1 ~資産の別の用途への転用の可能性及び対価を収受する強制力のある権利の評価(設例7)~

設例編も6回目となりました。わかりやすい解説を心がけていきますのでお付き合いお願いします。

 

今回は設例7「資産の別の用途への転用の可能性及び対価を収受する強制力のある権利の評価」です。論点は売上の計上時期で、あるサービスの提供について売上を計上するタイミングが一時点なのかそれとも一定期間にわたるのかという点です。

 

1.前提条件

(1)A会計事務所は会計コンサルティングサービスを提供する契約をB社と締結した。A会計事務所は調査に基づき専門的意見をB社に提供する。

(2)A会計事務所は契約条件のように契約を履行できなかった以外の理由で、B社から契約を解約する場合は、A会計事務所で発生した費用に10%の利益相当額を加算した額をB社が支払うことが契約上明記されている。

 

2.判定

(1)A会計事務所は本サービスの売上計上時期が一時点のものか一定期間にわたるものか判断するため、収益認識基準第38項への要件当てはめを行う。

(2)まず、収益認識基準第38(1)(下記参照)に該当するか検討を行った。

①本サービスは最終的な専門的意見をB社が受け取った時にしかその便益を享受できないこと及び収益認識適用指針第9項記載の通り、途中の成果を他の会計事務所に移管した場合は大幅なやり直しが生じることとなることが判明した。

②検討の結果、第38(1)には該当しないと判断した。

(3)次に、収益認識基準第38(3)(下記参照)に該当するか検討を行った。

①専門的意見はB社に固有の事実及び状況に関するものであるため、A会計事務所は当該専門的意見を別の用途に転用できるものではない。

②A会計事務所は契約により発生した費用に利益相当額を加味した金額を請求できる権利を有している。

③このため、本サービスは第38(3)の要件を満たしていることから、売上計上時期は一定期間にわたるものであると判断した。

 

3.解説

清掃サービスや工事契約の場合はそのサービス提供につれて、部屋がきれいになったり建物の建築が進むなどがはっきりとわかることから、モノやサービスが徐々に提供されていくという実態を踏まえて一定期間にわたって売上計上していくことになります(収益認識基準第38(1)(2)参照)。一方で、コンサルティングサービス等の無形資産でかつその成果物に価値がある場合、どのように判断すべきかというのが本設例です。ポイントは、第38(3)②の「対価を収受する強制力のある権利を有していること」で、契約上途中解約した場合にかかった工数に対して精算するような条項があるかどうかがポイントとなるといえます。ちなみに、条件に該当しない場合は一時点での計上(例:成果物引渡し時)となります。

 

4.参考

収益認識基準第38

次の(1)から(3)の要件のいずれかを満たす場合、資産に対する支配を顧客に一定の期間にわたり移転することにより、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する。

(1) 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること

(2) 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じる又は資産の価値が増加し、当該資産が生じる又は当該資産の価値が増加するにつれて、顧客が当該資産を支配すること

(3) 次の要件のいずれも満たすこと

① 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること

 

② 企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること

 

収益認識適用指針第9

会計基準第38(1)の要件に該当するかどうかを判定するにあたっては、仮に他の企業が顧客に対する残存履行義務を充足する場合に、企業が現在までに完了した作業を当該他の企業が大幅にやり直す必要がないときには、企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受するものとする。

他の企業が作業を大幅にやり直す必要がないかどうかを判定する場合には、次の(1)及び(2)の仮定を置く。

(1) 企業の残存履行義務を他の企業に移転することを妨げる契約上の制限又は実務上の制約は存在しない。

 

(2) 残存履行義務を充足する他の企業は、企業が現在支配する資産からの便益を享受しない。また、当該他の企業は、履行義務が当該他の企業に移転した場合でも企業が支配し続けることになる当該資産の便益を享受しない。

 

 

収益認識基準についてお困りごとがあれば、info@sousei-audit.or.jpまでご連絡ください。担当者(大高)から直接ご連絡させて頂きます。