第10回 返品調整引当金はこう変わる ~返品権付きの販売(設例11)~

難しい収益認識基準について、設例を通してかんたんわかりやすくお伝えする本解説も節目の10回となりました。設例はまだまだありますので、連載は続いていきます。引き続きよろしくお願いいたします。

 

今回は設例11「返品権付きの販売」です。前回に引き続き変動対価の論点ですが、今回は返品が随時可能な取引を変動対価と扱うことになる影響についての解説です。

従来はこういった取引における返品可能性は返品調整引当金として処理していましたが、収益認識基準導入によりそれが変動対価と整理されました。このため、引当金ではなく直接売上高を調整する会計処理に変更となっております。それでは実際の設例を通して会計処理方法を確認してみましょう。

 

1.前提条件

(1)A社は、製品を200千円/(原価は120千円/)で販売する契約を複数の顧客と合計200件契約した。製品を引渡した際に顧客から代金を受け取っているが、未使用品の場合は1か月以内であれば無条件で返品に応じることとしている。なお、返品された製品は原価以上で再販売できると想定している。

(2)当該契約は無条件返品が容認されていることから変動対価に該当する。A社は契約が多数あることから変動対価の見積法として期待値法を採用した。また、製品のうち194個は返品されないと見積もっている。

(3)変動対価を売上高に含める要件として、返品されるかどうかという不確実性が解消した際にそれまで計上した売上高の著しい減額が発生しない可能性が高いことが求められる。A社は顧客の返品意思という当社の影響力の及ばないものであるが、その見積もりにあたってのデータが十分得られることや確定までの期間が1か月と短いことから、194個が返品されないという可能性は非常に高いと判断した。

 

2.会計処理

(1)売上高の計上

(借方) 現金預金   40,000    (貸方)  売上高    38,800

                              返金負債    1,200

→当初販売金額40,000千円(=製品@200千円×200)-返品予想部分1,200千円(=@200千円×6)

 

(2)原価の計上

(借方) 売上原価   23,280    (貸方)  棚卸資産    24,000

     返品資産      720

→当初販売金額24,000千円(=製品@120千円×200)-返品予想部分720千円(=@120千円×6)

 

3.解説

上記設例のような取引は従来、返品予想部分を見積り、その粗利相当分480((売価200-原価120)×6)を返品調整引当金として売上総利益から控除するという処理をとっていたかと思われます。本基準ではそれを売上高と売上原価のグロス処理とし、更に当初売上金額及び売上原価から減額することになります。このため、本基準適用によりトップラインの売上高が従来処理よりも減少することが予想されます。法令や慣行等で返品が許容されている業界(医薬品、書籍、音楽ソフト 等)は注意が必要です。

 

なお、勘定科目として将来返金されると予想される部分(設例だと1,200千円)は「返金負債」と呼び、原価相当分は「返品資産」と呼びます(収益認識適用指針第85項参照)。慣れない用語ですので注意が必要です。

 

4.参考

収益認識適用指針第25

変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いかどうか(会計基準第54 項)を判定するにあたっては、収益が減額される確率及び減額の程度の両方を考慮する。収益が減額される確率又は減額の程度を増大させる可能性のある要因には、例えば、次の(1)から(5)がある。

(1) 市場の変動性又は第三者の判断若しくは行動等、対価の額が企業の影響力の及ばない要因の影響を非常に受けやすいこと

(2) 対価の額に関する不確実性が長期間にわたり解消しないと見込まれること

(3) 類似した種類の契約についての企業の経験が限定的であるか、又は当該経験から予測することが困難であること

(4) 類似の状況における同様の契約において、幅広く価格を引き下げる慣行又は支払条件を変更する慣行があること

 

(5) 発生し得ると考えられる対価の額が多く存在し、かつ、その考えられる金額の幅が広いこと

 

 

収益認識基準についてお困りごとがあれば、info@sousei-audit.or.jpまでご連絡ください。担当者(大高)から直接ご連絡させて頂きます。