本日もかんたん!わかりやすく!をモットーに解説を行っていきます。よろしくお願いいたします。
今回は設例17「企業が代理人に該当する場合」、設例18・19「企業が本人に該当する場合」について説明します。売上高と売上原価をグロス表示するか、あるいはネットして差額として表示するかの論点となります。損益には影響ありませんが、一部業種ではこれによりPLのトップラインが大きく目減りする可能性があることから重要論点となっています。それでは、純額表示となる場合、総額表示となる場合をそれぞれ見ていきましょう。
1.Webサイト運営業者→代理人となるためネット表示
・Webサイト上でショッピングモールを運営している。
・商品は出品者が出品するのみで自社製品はない。
・商品の価格は出品者が自由に決定できる。
・商品が販売された際に15%の手数料を入手する。
→当該業者は顧客に提供される商品について、その提供前に支配していないことから代理人に該当すると判断した。このため15%の手数料相当部分を売上高として計上する。
2.オフィス・メンテナンス・サービス→本人となるためグロス表示
・A社は顧客に清掃サービスを主たる役務とするオフィス・メンテナンス・サービスをB社と締結した。
・価格はA社とB社の交渉で決定した(月額200千円)。
・A社は清掃サービスについて外注業者と月額130千円で契約を締結した。
・外注業者はA社の指示により作業を行い、B社に対する作業責任はA社が負う。
→収益認識適用指針第47項の指標を考慮した。まず、作業責任をA社が負っていることから主たる責任はあるといえる。次に、価格交渉を行っていることから裁量権も有しているといえる。在庫リスクについては、外注業者との契約後でないとB社とサービス締結できないわけではないためリスクが軽減されているといえるが、他の状況を鑑みて当該サービスは本人に該当すると判断した。このため売上と原価をグロスで処理する。
3.航空券の販売→本人となるためグロス表示
・A社は格安航空券業者である。各航空会社から一定数の航空券を購入し顧客に販売している。
・航空券の返品はできないことを条件に割安に仕入れており、A社は独自の価格をつけて販売している。
→収益認識適用指針第47項の指標を考慮する。まず主たる責任については、チケットを確保することで航空会社の座席を提供するという責任を有しているといえる。価格裁量権についてもA社が有しており、販売前にチケットを確保していること、航空券の返品ができないことから在庫リスクも有している。以上より、A社は本人に該当することとなる。
(注)
今回はあくまでも解説のための事例です。前提条件をもとにした場合の判断ですので、他の事情を考慮すると異なる結論になることもありますのでご留意ください。
4.参考
収益認識適用指針第47項
第43 項における企業が本人に該当することの評価に際して、企業が財又はサービスを顧客に提供する前に支配しているかどうかを判定するにあたっては、例えば、次の(1)から(3)の指標を考慮する。
(1) 企業が当該財又はサービスを提供するという約束の履行に対して主たる責任を有していること。
これには、通常、財又はサービスの受入可能性に対する責任(例えば、財又はサービスが顧客の仕様を満たしていることについての主たる責任)が含まれる。企業が財又はサービスを提供するという約束の履行に対して主たる責任を有している場合には、当該財又はサービスの提供に関与する他の当事者が代理人として行動していることを示す可能性がある。
(2) 当該財又はサービスが顧客に提供される前、あるいは当該財又はサービスに対する支配が顧客に移転した後(例えば、顧客が返品権を有している場合)において、企業が在庫リスクを有していること
顧客との契約を獲得する前に、企業が財又はサービスを獲得する場合あるいは獲得することを約束する場合には、当該財又はサービスが顧客に提供される前に、企業が当該財又はサービスの使用を指図し、当該財又はサービスからの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力を有していることを示す可能性がある。
(3) 当該財又はサービスの価格の設定において企業が裁量権を有していること
財又はサービスに対して顧客が支払う価格を企業が設定している場合には、企業が当該財又はサービスの使用を指図し、当該財又はサービスからの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力を有していることを示す可能性がある。ただし、代理人が価格の設定における裁量権を有している場合もある。例えば、代理人は、財又はサービスが他の当事者によって提供されるように手配するサービスから追加的な収益を生み出すために、価格の設定について一定の裁量権を有している場合がある。
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